3勝目。
3勝目達成。
今日は鬼門の休日。この通りの荒れた天気なので、今日は一日中家にいる事になるだろう。久しぶりのノー外出。
やっぱり、俺の場合は家にいる方が、外に出ている時より刺激を回避しやすい。その傾向が最近顕著になってきた。
ただ、休日に家でゴロゴロしている事の屈辱感と言ったらすさまじい。何故だろう。別に家でまったりするだけだって、それはそれで素晴らしい休日の過ごし方なのに。
この屈辱感と言うのが、なかなか真に迫ったものがある。自分の部屋の淀んだ空気や、母親が洗い物をするカチャカチャという音が、
「お前は負け組だ。クソ童貞めが。イケメンやコミュ力の高い男は、モデルみたいな女の色っぽい体を堪能しているんだ。それに引き替え、お前にはエロサイトと自分の右手がおあつらえ向きだ」
という悪魔の囁きに聞こえる。
たまらない。釜でぐつぐつと茹でダコの刑にされた石川五右衛門のような気分になる。
その声から逃れたくて、弾かれたように家から飛び出して、電車に飛び乗る。
行く所と言っても、風俗しかないのだが。
この忌まわしきオナ猿心理を、痛々しい程生々しく表現した詩がある。
俺をイラつかせるスコアレスな夜。
俺に憎しみを抱かせるスコアレスな週末。
世界中を赤い目で見て
友達や家族に理由もなく
誰にも知られない怒りを抱く。
この手が最愛の恋人となり
命の液体がクリネックスにくるまれ
トイレの底へ流されるのを見ながら
いったいいつになったら
「うまくいった夜には何が起こるのだろう」と
考えずにすむ日が来るのかと思い悩む。
これは「ザ・ゲーム」という、アメリカのナンパ・コミュニティの実態を描いた、ノンフィクション作家ニール・ストラウス氏によるルポで、その中で著者のストラウス氏が非モテオナ猿だった高校時代に書いたとして物語の中で紹介される「性的フラストレーション」という詩を抜粋したものだ。
俺は英語版も翻訳版も両方持っているが、詩中の「スコアレスな夜」という部分を、翻訳版では「何もない夜」と訳している。
ただ、何もない夜という言い方より、オリジナル版の「スコアレスな夜」という表現の方が、嫌悪すべき現実を打破できずにいる焦燥感、無力感、孤独感、そういった物がリアルに伝わってくる気がする。
サッカー日本代表の試合でおなじみの、アジア予選で格下相手に何度ゴール前にボールを放り込んでもことごとく得点に結び付けられず、時間だけが無情に過ぎていく、あのしみったれた体たらくにも通じる部分がある。
スコアレスな夜。
スコアレスな週末。
スコアレスな一か月。
スコアレスな一年。
スコアレスな人生。
いつか自らの手で得点を挙げなければいけない。
いつか現状を打破しなければいけない。
いつか。
そういう事を、いつから言っているのか。
やってやらなきゃいけない。
現実を切り裂いてやらねば。
光る程研ぎ澄まされた男の牙で。
オナ禁で研ぎ澄まされた男の牙で。
煮えたぎる性のマグマを、一滴も漏らしてはいけない。